足尾銅山と桐生に行ってきました
〜都市デザイン部会ツアー記〜
■ JIA 都市デザイン部会のツアーで、群馬、栃木に行ってきました。
足尾銅山は、かつての日本の近代化を支えた繁栄の時代から、産業の衰退、公害問題、そして禿げ山の再生と、産業の歴史を一気に肌で感じられるような場所です。
資源としての銅が日本の近代化に大きな貢献をしたことばかりではなく、欧米の削岩技術や製錬技術の導入により増産と効率化することを習得し、さらに製錬で発生するガスを無公害化する技術を自ら開発し、その後それらの技術の輸出によってアジア諸国の銅山開発に貢献した事を知りました。
困難を乗越えて絶えまなく技術発展していったそのスケールの大きさには驚くばかりです。
「足尾歴史館」ではこのような技術の進化と継承とそれに関わる人々の歴史を実感できます。
足尾銅山 山の下には上下600メートルずつ合計1.2キロの高低差に渡って坑道が掘られた。山には緑が戻りつつある
桐生市は、江戸幕府直轄領という時代から近代まで絹織物産業により栄え、ここもまたかつてGNPの12%程度を桐生市だけで占めていたというほどの繁栄の町だったそうです。
街にはのこぎり屋根の織物工場その他の古い建物が多く残っています。それぞれの理にかなった作りに、大いに刺激を受けました。
北側の高窓から降る柔らかい光に包まれた大きな空間は、とても居心地の良さを感じます。
過去の歴史を見ることによって、これから起こりうることを想定して建築を作っていく洞察力も建築家には必要であり、その建物が及ぼす現象や効果に対しても責任は大きいと痛感した旅でもありました。
桐生 のこぎり屋根工場跡利用アトリエ「無鄰館」オーナー北川紘一郎氏に、桐生の保存再生運動について話を伺う。
日本建築家協会発行 Bulletin2010年9月号掲載