旭硝子の情報サイトGlass Plaza Pro内の、「良き建築家と出会う」というページに、私のコラムが掲載されました。

自分の家が欲しくなる理由(わけ)

■住まいの話題[751]:自分の家が欲しくなる理由(わけ)
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家の価値ってなんだろう?

家を建てるにはお金が必要です。住宅ローンを利用したとしても、普通の人にとっては、かなりの経済的負担になるでしょう。いったい家には、そんな重荷を背負ってまで手に入れるほどの価値はあるのでしょうか?

とりあえず住むところさえあればいいのではないかと言う人もいます。しかし 私は断然、「自分の家を建てる価値はある」と答えます。私の考える家の価値とは、単に資産としての価値だけではなく、豊かな人生を送るための、優れた道具としての価値です。人は、道具を使うことによって進化してきた歴史があります。

現在だってきっとその進化は続いているのでしょう。ですから、極端かもしれませんが、「優れた道具としての家」を持っている人は、持っていない人と比べて進化の差があっても不思議ではありません。少なくとも、自分を生かす物は何かを見極める力はつくでしょう。例えば、一流のスポーツ選手は、シューズなどの道具を選ぶときに、自分に合ったものを選びます。それによってさらに高いレベルの力が発揮でき、磨かれていくわけです。

家の場合にも、同じことが言えるのではないでしょうか。その人に合ったよい家に住むことによって、人間として進化し、一流に近づいていく。そこに家の価値というものがあるのです。

「優れた道具としての家」を得るには
たまたま親から受け継いだ家が、その人にとって最適という場合も、もちろんあるでしょう。しかし、現代社会では、いろいろな考え方や職業の方が存在します。昔と比べて生活スタイルが多様化しているのですから、生活の道具である家も、アスリートの道具と同様に、自分に合ったものを使うべきだと思います。その際に建築家がすることで一番重要なのは、その建主にとって何が一番大切かを見抜いて判断することです。そしてそこで得た情報を元に、その人その家族、その場所、に合った家を作っていきます。私のような建築家の役割はそういうことだと思っています。
ドラムの音量約120db想定して設計した防音スタジオ。レコーディング時の音質も良く、演奏しやすいと評判。 太陽勾配を考慮した屋根を持ち、白を基調とした外観。スタジオ部分は鉄筋コンクリート造で、その他は木造。
よい家が生む効果
それでは、その「優れた道具としての家」を持つと、どんなことが起きるのでしょうか。ここでは、私が設計した「ギタリストの家」の事例を紹介します(写真参照)。建て主はプロのギタリストで、当初は、一戸建ての家を借りて家族と共に住んでいました。子育てのための良い環境と、仕事場としての防音スタジオの機能を兼ね備えた家を求めて、私に相談に来られました。

設計するにあたってイメージしたのは、生活の糧に直結する、防音スタジオを家の軸にしながらも、豊かな家族の生活が得られる空間です。スタジオの機能を最優先とした配置計画と、光と風の通りが良い家族の空間。できるだけ静かさを保てる寝室や個室などの条件を全て盛り込んで、明るく居心地のよい空間を作りました。

これらがバランスよく計画できたことによって、「優れた道具としての家」の提供は成功したと思います。その結果何が起きたかというと、建て主の仕事の幅は確実に広がりました。これは生活が進化したと言っても良いのではないでしょうか。そしてもちろん音楽家としても進化を遂げ、家族が安心して生活できる場所を得ることができました。

生活が進化する「豊かな家」を目指す
ということから結論を言いますと、自分の家が欲しくなる理由(わけ)。それは、生活を進化させて、豊かな生活を手に入れたいからということなのだと思います。豊かな生活とは、例えば、良い音楽を聞いたとき、良い絵画を見たとき、旅をして良い景色や美味しいものを食べたときなどに感じる満足感。そんなときに感じる、お金には変えられない豊かさ。人生がより素敵に、より楽しく思えるような、そんな「豊かな家」を、今後もたくさんの皆様に提供していけるように、建築家は頑張ります。
住まいの話題[751]執筆者
■大川 宗治(おおかわ むねはる)/ 一級建築士事務所 OM-1
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